井上ひさし先生の著『本の運命』を読了した。
自身の半生をエッセイ風に記しながら、「本の読み方十箇条」や「子供を本好きにするには」など読者や社会に向けたメッセージを綴った一冊。
いろいろと興味深い話があるので、それらは別途個別にまとめることにするが、今回は「本は紙の方がいい」という話。
電子書籍と紙の本を比較する本書中の一節に、こんなものがある。
電子ブックでも本でも、入っている情報は同じものかもしれません。ただ、本はそれだけじゃない。活字の組み方、ページをめくる感触、持った時の重さ、そういったものをすべて含めて本と言ってるわけです。
その通りだろう。
本というアナログな物体だからこそ感じる重さ、紙の肌触りや匂い。
単に読書と言っても、そこには様々な感覚を通じて本を楽しむ過程がある。
よく「食事は五感を使って楽しむもの」というが、読書も似たようなものだろう。
文字という視覚情報からだけではない感覚が、読書体験を豊かなものにする。
視覚情報に関しても、紙の本ならではの演出が盛り込まれることがある。
漫画についていえば、もはやそういった演出がないものの方が少ないのではないか。
電子でもある程度感じることはできるが、紙の本には勝てないだろう。
本の内容を定着させる記憶に関しても、本には優れている点がある。
例えば、重要だと思ったところに線を引いたり、書き込みをしたりする。
電子書籍でも今や可能なことだが、本には「大体このくらいのページに線を引いたな」という本のページ数の感覚がある。
電子書籍では機械的なページ数という情報しか手掛かりがないが、本だと残りのページ数の感覚が手に残るので、後で見返すときも引きやすい。
また、辞書なんかもそうだが、分厚くて重たい本は「重要なことが書いてある本だ」と錯覚する心理的効果があるらしい。
これは電子書籍にはできない芸当だ。本という媒体そのものの強さと言える。
後は、本書でも語られている「本との出会い」という点もあるだろう。
電子書籍を手に入れる場合、ほとんどは「買いたいものを検索してそれを買う」だけにとどまる。
紙の本のように、ふらっと立ち寄った書店で不意に出会った本をうっかり買ってしまう、なんてことはなかなかない。
また、本の場合、1冊の本が様々な人の手を渡り歩くことができる。
本書の中でも、以前自分で売った本と何年も後にまた出逢うことがあったと書かれている。
電子書籍の場合、売って別の人のところに渡るということは基本ないので、これも本の面白いところと言える。
自分は、漫画以外は基本紙の本にしている。
漫画はどうしても巻数が増えると嵩張ってしまうため、やむなく電子にしているが、それ以外は紙の本であることを大切にしている。
紙の本だと、寝る前に読んでも目をそこまで傷めないので、そういう点でも助かる。
やっぱり、本は紙の方がいい。